はじめに ― 市況としての「メモリ不足」
2025年に入り、DRAMを中心としたメモリ商品の供給不足と価格高騰は従来の景気循環や一時的な需給調整とは異なり、AI需要を起点とする構造的変化に基づくものである。特に生成AIやAIデータセンター向け需要の拡大により、メモリは単なる部材ではなく「戦略的資源」として扱われるようになった。その結果、PCやスマートフォンなど従来の主力用途向けの供給が相対的に後回しとなり、一般市場では品薄感が常態化している。
1.2025年に顕在化した価格高騰と調達難
2025年を通じて、DRAMおよびNANDフラッシュの価格は急上昇した。契約価格・スポット価格ともに上昇基調が続き、短期間での価格修正や見積有効期限の短縮が常態化している。
営業現場では、
- 見積後の価格変更
- 短期の在庫確保要請
- 長期リードタイム前提での案件進行
といった対応が不可避となった。特にDDR5やLPDDRなどの高性能品は、納期が数カ月単位となるケースも多く、エンドユーザーの生産計画に直接影響を与えている。
2.メーカー戦略の変化と商流への影響
主要メモリメーカーは、生産数量の拡大よりも、高付加価値分野への集中を優先している。AI用途向けメモリは利益率が高く、メーカー側にとって優先度が極めて高い。
この結果、
- 汎用品の供給抑制
- 一般用途向けの割当縮小
- 正規ルートでも数量確保が困難
といった状況が発生している。商社・代理店にとっては、「価格交渉」よりも「数量確保」そのものが付加価値となり、情報力や調達ネットワークの差が競争力に直結する局面に入っている。
3.ユーザー市場への実務的影響
PC・スマートフォン市場では、価格転嫁と仕様調整が同時進行している。メーカー側は、メモリ容量を抑えた構成で価格上昇を抑制する一方、ユーザー側では買い替えの先送りが進んでいる。
また、産業機器や組み込み用途では、
- 既存採用品のEOLリスク
- 同等品・代替品の再評価
- 在庫確保を前提とした長期購買
といった動きが顕著になっている。営業現場では、単なる型番供給ではなく、将来供給を見据えた提案力が求められる。
4.2026年の市場展望 ― 高価格時代への適応
2026年に向けて、メモリ供給は一定の回復が見込まれるものの、需要増加を吸収できる水準には達しないと見られている。価格についても、急落を期待できる状況ではなく、高値圏での推移が現実的なシナリオとなる。
この環境下では、
- 早期の在庫確保
- 複数ソースの検討
- EOL・互換品を含めた調達戦略
が営業・商社にとって重要な武器となる。単価の安さよりも「安定供給できるか」が評価軸となりつつある。
結び ― 商社・営業に求められる役割
2025年のメモリ不足は、単なる市況悪化ではなく、メモリ市場が構造転換期に入ったことを示している。2026年は、高コスト環境を前提に、供給側と需要側が新たな均衡点を探る年となるだろう。
営業・商社にとっては、
価格情報・在庫情報・将来供給の見通しを含めた「提案力」こそが最大の付加価値 となる。
今後は「物を売る」だけでなく、「供給リスクを管理するパートナー」としての役割が、より強く求められていく。